黒潮が歌うハイヤ 風待ち汐待ちの湊であった牛深では、古くから、海の男と浜の女が、黒潮のうねりのような情熱をぶっつけあってきた、その情熱がたぎり上って生れたハイヤ節、これは船乗りたちによって全国に伝播し、佐渡オケサや北海道ソーラン節、また阿波踊り、その他数々の民謡の源流となった。
牛深ハイヤ

○ハイヤエーハイヤ ハイヤで今朝出した船はエー どこの港に サーマ 入れたやらエー
「エーサ 牛深三度行きゃ三度裸 鍋釜売っても酒盛りゃしてこい 戻りゃ本土瀬戸徒歩(かち)わたり」

○ハイヤエー来たかと 思えばまた南風(はえ)の風ヨー 風さえ恋路の サーマ 邪魔をするエー
「エーサ 黒島沖からやって来た 新造か白帆か白鷺か よくよく見たればわが夫(つま)さまだい」

○ハイヤエーハイヤ ハイヤで半年ゃ暮らすエー 後の半年ゃ サーマ 寝て暮らすエー
「エーサ どっから来たかい薩摩から 碇も持たずによう来た様だい」

○ハイヤエー大島(うしま)片島 片潮かけてヨー なぜに法ヶ島が サーマ ほげたやらエー
「エーサ 南風の風ゃ そうめん 北東風(きたごち)ゃだしで 沖南風(おきばえ)いれこで 味ゃよかろ」

○ハイヤエーとっちゃ投げ とっちゃ投げ三十四五投げたエー 投げた枕にゃ サーマ 罪(とが)はないエー
「エーサ 権現山から後ろ飛びゃするとも お前さんに暇状(ひまじょう)はやいもせんが取いもせん」

○ハイヤエー船は 出ていく帆掛けて走るエー 茶屋の娘が サーマ 出て招くエー
「エーサ おーさやったとん届いたかい 届いて煮て吸って舌焼いたサイサイ」

○ハイヤエー沖の 瀬の瀬にドンと打つ波はエー あれは船頭さんの サーマ 度胸さだめヨー
「エーサ 段々畑のはぜ豆は ひとさや走ればみな走る 私ゃお前さんについて走る」

○ハイヤエーたんと 売れても売れない日でもエー 同じ調子の サーマ 風車エー
「エーサ 魚貫万匹 茂串鯖 宮崎鰹ん骨横ぐわえ 加世浦(かせんな)きんなご逆(さか)すごき 天附渡れば室鯵(むん)の魚 三匹(ごん)なめたらどっとした」

○ハイヤエー瀬戸や 松島つけずにすぐにヨー 早く牛深に サーマ 入れてくれヨー
「エーサ そこ行くねーちゃん汚れが伊達かい 汚れちゃおってもかんざしゃ銀だよ 銀のかんざし買うたか貰うたか 貰ちゃおっても買うたと言う」

○ハイヤエー鯛に 鰹に 鰺 鯖 鰯エー 鰤に万匹(まんびき) サーマ 鱶(ふか)の山エー
「エーサ 牛深よいとこ一度はお出で 人情豊かな港町」

○ハイヤエーまつよ まつよで黒島の松エー 上り下りの サーマ 手掛け松エー
「エーサ そろばん枕で考えた 一桁違えば大きな損だよ」

○ハイヤエーハイヤ ハンヤはどこでもあるがエー 牛深ハイヤが サーマ 元ハイヤエー
「エーサ 川端石だい起こせば蟹(がね)だい 蟹の生焼きゃ食傷のもとだい 食傷蟹なら色なし蟹だい」

<ハ押せ ハ押せ ハ押せ押せ押せ押せ 押さねばのぼらぬ 牛深瀬戸じゃ>

その他(参考)

やいもせん(やりもしない) 取いもせん(とりもしない) おーさ(アオサ、岩のり) きんなご(きびなご) なめたら((刺身で)食べたら) どっとした(おなかいっぱいになった) 三ごん(三匹、一(いっ)こん、二こん、三ごんと数える)

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